超高齢社会に突入した我が国では、医療の質をどう確保するかは喫緊の課題となっている。特に歯科医療は糖尿病や誤嚥性肺炎など、全身の健康づくりに直結するというエビデンスが提示されつつあり、今後の医療制度を検討するうえで無視できない存在となっている。

さて、我が国の歯科医療制度は、他の先進諸国と比較したとき、以下のような特色がある(※1)とされている。

  1. 自由開業医制
  2. 国民皆保険
  3. 現物給付

本記事では、この3点について、詳しくみていくこととする。

① 自由開業医制

まず最初の特色として挙げられるのは「自由開業医制」。文字通り、歯科医師であれば全国どこでも、自由裁量で歯科医院を開業できるという制度だ。

ただ、臨床研修が義務化された平成18年度以降に歯科医籍に登録された歯科医師は、臨床研修を修了していないと、全国どこでもというわけにはいかない。臨床研修を未修了の歯科医師が歯科医院を開業するためには、医療法第7条に基いて、開業する先の都道府県知事の許可が必要となる。

病院を開設しようとするとき、臨床研修等修了医師及び臨床研修等修了歯科医師でない者が診療所を開設しようとするときは(中略)、開設地の都道府県知事の許可を受けなければならない
ーー医療法第七条より抜粋

② 国民皆保険

次の特色を見ていこう。国民皆保険は、我が国の医療制度最大の特色である。1958年に国民健康保険法が改正され、国民皆保険が実現された。

日本国民は、必ず公的医療保険に加入することが義務付けられており、その医療保険の被保険者になっていれば、全国どの保険医療機関にもアクセスすることが可能だ。これはフリーアクセスとも呼ばれる。保険医療機関とは、保険診療を行う医療機関のことで、ほとんどの歯科医院は保険医療機関に該当する(画像は厚生労働省ウェブサイトより)。

国民皆保険制度の意義(厚生労働省)

③現物給付

日本の歯科医療制度、最後の特色は、現物給付であるということだ。前項で解説した保険医療機関において、被保険者すなわち患者は、現物給付として療養の給付を受ける

その現物給付の対価として、患者は医療費の一部を負担し、この診療報酬は全国どの保険医療機関にアクセスしても同一である。

国民皆保険制度の堅持と議論を

以上の3点が、日本の医療制度の特色といえる。1958年に国民皆保険が実現されて以降、世界最高の平均寿命と保健医療の水準を維持してきた日本であるが、未曾有の超高齢社会や医師不足など、医療全体の問題は山積している。

2065年には、約2.6人に1人が高齢者(65歳以上)、約4人に1人が後期高齢者(75歳以上)になる(※2)と予測されるなかで、これまで培ってきた国民皆保険を含む日本の医療制度をいかに対応させ、堅持していくかという議論が、今後も活発になされていくことだろう。

参考文献

  1. 石井拓男, 尾崎哲則, 平田創一郎ほか『スタンダード社会歯科学』学建書院, 2016.
  2. 平成29年度版高齢社会白書(内閣府)